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うづきじんのBLOG うのはなことのは

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杯浸す桜酒

 UBWバッドエンド後日談。
 たたかうおんなのこたち。












「……先輩。何か、あったんですか?」


 と。
 流しの傍ら、自身の真横。
真白い布巾で食器を拭う少女の声に、泡と水とに濡れて塗れた両の腕の動きを止めた。
「―――何かって。なにがさ」
「……御飯の時から、なんだか凄く」
 落ち込んでるみたいに見えて、と。憂いに濡れた眼を伏せて、俯く少女に苦笑を返す。
「気のせいだろ?俺、いつも通りだけど」
 そう。
 衛宮士郎はいつも通りで、衛宮の家も変わらない。朝には桜が笑顔で台所に立ち、学校では一成達クラスメイトとの穏やかな学校生活。夜には桜と、藤ねえと。三年の間変わる事の無かった、三人での騒々しくも楽しい食卓。


 何も―――変わらない。変わってなど、いない。


「……そうですよね。先輩は変わって……ませんよね?」
「ん」
 短く頷き、再び食器を泡立てる。微笑を浮かべて居間へと消える、少女の姿を横目で追って。
 ―――うん。
 小さく重い、吐息と共に。声には出さず、深く頷き。
「―――気の所為だ。俺は、いつも通り」
 何も変わってなんて、いない。
 落ち込む様な『何か』なんて、無い。
 自分に言い聞かせる。それは錯覚で、間違いで。理由も根拠も何もない。


「……ない、よなあ?」


 渋面で一人、首を捻る。どうも今朝から調子が悪い。どうかすると埒も無い考え、妙な違和感が取り止めも無く脳裏に浮かぶ。
 それは例えば。


 あと一人か二人、食卓を囲む人数が少ない気がしたり。
 どうも食材の消費量が、控えめな気がしていたり。
 ……学校の階段を下りようとする度に、酷い寒気に襲われたり、と。


「……今日は早く寝るか」
 首を振る。気持ちが悪いこと夥しい。違和に寂寥、不快に不安。触れて感じる全てのものが、薄絹一枚隔てて障る。一人になると、そんな悪寒が一際強く感じられた。
 泡を落として、手を拭う。藤ねえはもう帰った。桜もこれからお茶でも飲んだら、帰るのだろう―――
「―――ったく。幾つだ、俺は」
 顔を顰める。一人暮らしなんてもの、今更寂しがる年でも無いだろうに。
 ―――タオルを握り締めたまま、ただぼんやりと視線を落とし。

 火傷にも似た、鈍く響く疼痛。
 そんな跡すら無い癖に、何故だか痛みが残るそれ。



 左の腕を、朧に見つめた。













『杯浸す桜酒』




 






 苦言を馬耳に聞き流す。目の前のカップから立ち上る香りは馥郁と、文句の付け様のない出来ではあったけど―――向けられる視線と、表情と。何より声と言葉の渋さは、それを阻んで余りある。
 ……厄介なのは。わたし自身が彼の言葉に、心の何処かで頷いているということだった。あまつさえ。視線を逸らしても飽き足らず、眼を瞑れば唇を大いに歪めた兄弟子の姿が克明に映ったりして。
 こちらも渋々、視線を返す。……しかし。
 こいつも何時までも飽きないで、よくもまあ。
 何がそこまで気に入らないのか。


「―――士郎を殺さなかったのが、そんなに不満?」
「無論だ」


 拍も置かずに、憮然と返す。椅子にすら座らず、壁に背中を預け。腕組みをした姿のままに、睨み付けて来るその眼光は非難と言うより殺気に近い。
「君は言った筈だ。この聖杯戦争には自分が勝ち残る、と」
「ええ」
 頷きを返す。その意志は今も変わらない。
 さしたる願いなどこの身に在りはしないけど。この戦争に勝ち残り、聖杯を手にする事は父さんの―――何より魔術師、遠坂凛の。十年の永きに渡る目標なのだから。
 わたしの答えに、皮肉に哂い。


「ならば最善を尽くすべきだ。令呪を剥がし、本人ならず周りの人間の記憶までも奪い―――そこまで手間を掛けずとも。あと少しだけ深く呪えば、全てが綺麗に片付いただろうに」


「……あの時点じゃマスターはもう一人、恐らくは学校に居るとしか分からなかった。悪目立ちしてどうするってのよ」
「らしくないな」
 険悪を装い、放った声に肩を竦める。……腹が立つこと、夥しい。
 なんでこいつは、こんなにも。妙なところで、勘が良いのか。


「普段の君なら敢えて目立つ選択肢を選ぶ。相手を揺さぶり、軽挙に動く敵を討つ―――衛宮士郎を始末するのは、あの時の私達にとっては恐らく最善の策だった筈」


 視線を赤の騎士から逸らす。―――煩い。
 ……言われなくても分かってる。堂々とあんな場所にあんな大仕掛けを打つマスターだ。少し揺さぶれば、馬脚を現す可能性は高かった。
 ―――けど。


「今更今更でしょ、そんなこと。こうなったら揺さぶりも何もないじゃない」


 そもそも。学校内の結界を一時的とは言え破った時点で、相手に喧嘩を売った様なものなのだから。遅かれ早かれ、そいつが姿を見せるのは時間の問題だった。
 昨日相対し、退かせはしたが滅ぼすには至らなかった。彼女―――ライダーのサーヴァントを通し、遠坂凛とアーチャーの存在はそのマスターに知られたと見て間違いない。
 そう。
 こうなった以上、衛宮士郎を手に掛ける、意味など―――
「充分に有るな」
 ……否、と。断言が放たれる。
「無知で愚かで未熟とは言え、衛宮士郎は曲がりなりにも魔術つか―――」
 何故か不機嫌そうに、咳払いを一つ。
「―――魔術師の端くれ。しかも元とは言え、セイバーのマスターだ。あまつさえ、私達と一時は同盟すら結んでいた」
 狙われる理由、狙うマスターに事は欠かず。それに伴う不都合は、必ずこちらに累を及ばす、と。
 延々と。続ける彼を、睨み付け。


「うっさいわね。そんな余裕はやんないわよ」


 言い訳染みているとは思うが、これはこれで本音ではあった。セイバーのマスターは脱落し、ライダーのマスターは恐らく大した敵ではない。先の戦いでもライダーはこいつに押されっぱなしだったし、そもそも力が足りないからこそのあの結界なのだろうから。
 ……とは言え、残り。一度は相見え、互角を演じたランサー。退けたとは言え、強大に過ぎたバーサーカー。残るキャスター、アサシンについても主と共に、正体を掴めてすらもいないけど。
「言ったでしょう?わたしは流れる血を最小限に留めて、勝つ。その為に」
 答える内に思いついてにやり、と微笑い。
「―――セイバーの召喚に臨んだんだから」
 返す皮肉に、絶句して。
「……まだそれを言うか。君は」
 忌々しげに、呻きを洩らす。……出会って数日。浅くは無いが長くも無い付き合いの中で、わたしにもこいつの性格が少しばかりは見えてきた。


 普段は大人ぶって諭してきてはいるけれど。その実、分かり易い子供みたいな。


「―――ふん。だから彼女を捕らえた、と言う訳か?私では頼りないから、と」
「……そんなんじゃないわよ」
 彼の言葉に面を喰らって、上擦る声で答えを返す。実際、そんなつもりは毛頭無く。
 ……以前はどうあれ。今のマスター、遠坂凛は。この、アーチャーと言うサーヴァントを結果的に引き当てた事を、まるで後悔してはいなくて。
 ただ。


「―――煩いわね」


 答えは返さず、悪態を投げる。浮かんだ答えは、あまり堂々と言える程には説得力はなかったし。
 それに。
「そろそろ行くわよ。あんな代物、昼間に発動したら大事なんだから。さっさと手を打つわ」
 思い出す。夜の校庭、夜の墓地。
 ―――校舎の裏。雑木林でのライダーとの戦い。
 見慣れた場所を、縦横に巡る鎖と刃と黒の影。


 わたしを庇い。二刀で彼女を退けた、赤の弓騎士の広い背を。


 ふん、と嫌味に鼻で笑って。
「承知した。―――不肖のサーヴァントとしては、全力を尽くすくらいしか能がないだろうからな」
 背を向け、居間を後にする後ろ姿を胡乱に見やる。
 ……やっぱり拗ねている。
「……ったく」
 もう一度。今度はこちらが、忌々しげに呻きを洩らす番だった。乱暴に髪を弄り、わざと音を立て椅子から降りる。
 ―――本当に。
 信用してないのは、どちらだと言うのか。
 廊下へと消える背中を確認し。それでも小さく、外には洩らさず。


「―――遠坂凛のサーヴァントは。最後まで、あんたよ」


 二度とは言えず。伝える気のない、戯言めいた呟きを。内から零れた、交わす気もない約束を。
 舌下に乗せて、転がした。











 真二つに切る。

 それを二つに、そして二つに。真紅のそれに刃を差し入れ、等分してから滑らせる様に、その表面に刃先を入れて。
 耳を模り皮を立て、楊枝を一つ突き立てて。


「ほら」


 真白の皿に映える赤。林檎の兎のその群れを、寝台の上で半身を起こすその少女へと差し出した。
 皿を受け取り、寝台付帯のトレイに載せて、楊枝を手に取りまじまじと見て。
「……上手いもんだな」
「別に、そう難しいことでもないぞ?こんなの」
 やけに感心した声に、果物ナイフを拭って応える。
 場合が場合とは言え。こいつにこんなものを頼まれるとは思わなかったけど。何故だか妙に楽しげに、林檎を口へと運ぶ姿は少なからずの満足感を覚えさせた。
 ……ここ最近、相変わらずに覚える不安感。それが多少なり、晴れる位には。
 けれど、まあ。


「安心した。元気そうだな、美綴」


 美綴綾子―――一年の頃は共に弓を教わり、鍛錬に打ち込んだ少女。色々あって俺が部活を止めてからは、あまり話す機会もなかったけれど。
「安心も何も」
 僅かに頬を赤らめる。苦笑半分、照れ半分のその顔は。恐らく散々心配された『病状』と、現実の落差からだろう。
 小さいとは言え、曲りなりにも病院の個室。消毒液の匂いが満ちたその廊下とは打って変わって、花と果物の香りに溢れたその様は、目の前の少女の人望と―――加えて過分な懸念の産物と言えた。
「大袈裟なんだって。単なる貧血だよ」
「や、そうかもしれないけど」


 夜の街中、倒れているところを発見される、というのは。
 それを伝え聞いた知人友人の血の気を引かすには充分過ぎるシチュエーションで。


「時と場所が悪かったな。……けどさ、美綴」
 からかう様に言った台詞の、その続きは。
「ん?何だ、衛宮」
「何でまた貧血なんか。もしかして前から体調とか悪かったのか?」
 その実割と真剣な懸念ではあった。日頃の藤ねえの猛特訓にも随いて来てた癖に。


「か弱い女の子じゃあるまいし」
「……退院したら覚えてなよ、あんた」


 半眼で唸るその姿に笑顔を返す。……ま、この調子なら本当に大丈夫、か。
 気を取り直し、腕を組み。
「いや―――本当、何も心当たりが無いんだよね。急に眠くなって、そのまま」
 気付いたらベッドの上だった、と。流石に少し不安げに答える頭に、手を置いて。
「貧血には鉄分が効くから。今度レバーとかほうれん草で、なんか作ってきてやるよ」
「……色気も何もないな。相変わらずだ、あんたは」
「?なにがさ」
「何でもない。……いや、良くはない、か」
 ひたり、と。一転、目を据わらせて。


「あたしにはともかく。桜には気を遣ってやれよ?」


「桜?」
 言った台詞に面食らう。何でここで桜の名前が出てくるのやら。
「……ここ何日か、妙に元気がなかった。話しかけても上の空で、いつも以上に俯いてるし……」
 気が付かなかったのか?と。非難の視線を向ける美綴に、衛宮の家での記憶を漁る。
 ここ何日か。毎朝毎晩、衛宮の家を訪れる。見慣れた家族、少女の様子―――


「―――あれ」


 眉を顰める。……確かに桜は来た筈だ。ここ一年半の間、間桐桜という少女は殆ど毎日うちに来る。逆に言うなら、来なかったのなら、忘れてしまう訳がない―――しかも、ほんの数日の間に。
 その、筈なのに。
「……む」
 霞が懸かったかの様に。
 その姿、のみならず。そこら辺の記憶が、何故か曖昧で掬えない。


 思い出せない、忘れたと言うより。
 その殆どが、殆どの部分綺麗に抜けて落ちているかの様な。


「……衛宮。しっかりしろよ?」
 頭を抱え、唸る姿に美綴が呆れの声を投げてくる。……ごもっとも、と言う他はなく。視線を上げて、頭を掻いた。
「―――ああ。どうも最近、惚けてたらしい」
「全くだ。桜だけじゃない。あんた最近、随分変だったぞ?」
「変、って」
 どこが、と。声には出さず、目で問い掛ける。美綴は指で折りながら。
「深刻な顔してるかと思えば、急に赤くなったり。ちょっとした音とかに妙に反応したり」
 なんかでっかい悩みの渦中に在るんじゃないか、と。
「……それこそ大袈裟だって。俺はいつもの通りだぞ」
 いや、まあ。妙な違和感に襲われたり、やけに記憶が曖昧とかはあるけれど。


 別に今。
 そんなトラブルに巻き込まれてなど、いない訳だし。


「―――ん。そろそろ帰る」
 そーかー?などと、誰何と疑念の呟きを洩らす病床の少女に短く告げて、立ち上がる。こいつは思ったよりも元気そうだったし―――それより、何故か。 


 このまま、美綴に付き合っていると。
 なんだか。とても大事なことを。忘れたことを、忘れたことに。
 気付いて、しまう、よう、な―――


「あ。逃げる気か、衛宮」
「―――誰が。また来るよ」
 気を取り直す。軽口を交わし、踵を返し。鞄を持ち上げ、振り返り―――
「?―――そう言えば」
「ん?」
 何とはなしに、問うてみる。一年の時とは違う。今現在は同じクラスでも、部活でも無いのに。


「や。何で俺の様子とかそんなに知ってんのかな、って」
「……鈍いなら、徹底しろ。あんたは」


 不機嫌そうに呟いて。
 背を向け布団に潜り込む、少女の繭に言葉を投げる。
「お大事に」
「―――衛宮」
 背を向けたまま、呟きが返る。
「林檎、美味しかった。―――レバーとほうれん草、だっけ?」
 期待してるからな、と。無愛想な声で言い放つ声に、苦笑を浮かべ。
「ああ。またな」
 答えを返し、扉を閉める。―――時刻は六時。早く帰って、腕によりを掛けた夕食を支度して。


「……ん。元気付けてやらないとな」


 一人、笑って呟きながら。
 その少女の柔らかな笑顔を脳裏に想い、描いた。





「……あーあ。可愛い後輩は裏切れない、か」











『得策とは思えないがね』

 ……歩みも荒く、その場へ至る道を往く。朧に透けた彼の姿はわたし以外に視えはせず、直接脳裏に響く声さえわたし以外に聴こえない。
 詰まる所。
 こいつの反対など、黙殺するのはわたしが意を決めさえすれば至極容易いことだった。
『こちらから喧嘩を売ることもあるまい。幸いにして、今回の聖杯戦争には傍観を決め込む様子だしな』
 懐に手を差し伸べる。硬く冷たい、十の石。袖口に誂えた内ポケットのその口に、十七年の重みを仕込む。
『サーヴァントを持たないとは言え―――一個の魔術師として見るならば。決して容易な相手ではない』
 いつかに聞いた、彼のイメージ。落ちて灼き打つ撃鉄を、自身の姿に重ねて想う。
 両の腕に装填された弾丸は、やり様によってはそれこそサーヴァントすら倒しきるだろう―――
『しかも。君のそれは、この戦いにおける切り札だった筈だ』
 ……歩みを止める。
『良く考えるのだな。それだけの価値が、これからすることに在るのかどうか』
 無言のままに、袖を捲くって。


 紅く輝く、簡素な文様。半ば以上に本気の態で、意志を翳して視線を刺した。


『―――ふむ』
 ……何故だか。何処か嬉しげな声に、沸騰していた頭が醒める。眉を顰めて、姿を見やり―――


「―――ならば。非才を尽くし、力になろう。我が主」


 皮肉な表情で、素直に微笑い。
 芝居がかったその声で真摯な色の答えを返し、既にその手に二刀を構え、出で立つ彼に面食らう。
 ……何だか、こいつ。


「妙に気合入ってない?アーチャー」
「なに。感動しただけさ」
「……感動って」


 何によ?と。声には出さず、眼で問うた。
 唇を歪め。視線は空へ、あらぬ方へと投げながら。


「妹を想う、マスターの深い愛情に」  
「―――前言撤回」


 この身を流れる、遠坂の家の血が憎い。取り敢えず、ことが終わって帰宅を果たした暁には、古い時計を微塵と化すまで踏み付け壊すと心に決めた。
 ……意志は勿論変わらなくても。何とはなしに気勢を削がれ、夕暮れの街を闊歩する。
 ―――まあ。確かに頭に血が昇っているよりは、こちらの方が幾分ましか。
 こいつがそこまで考えていたとは、思えないけれど。
 幾歩かわたしの前を歩む、赤い背中をぼんやり見やる。
 ……こいつはこいつで、本当に気合が入っているらしい。
 確かに、それは。不幸な少女を救う戦い、なんてのは騎士の所業に相応しいけど。
 捻くれてはいても、こいつも一応騎士の端くれだと言うこと、か。


 ……他に張り切る理由になんて、思い当たる節もないし。


 暫しの間、無言のままに歩みを進め。
「―――凛」
 と。
 背を向け、歩みは止めぬまま。呼びかける声に、知らず下がった視線を上げた。
「なに?」
「この前の件だ。まだ答えを聞いていない」
「この前、って」


「セイバーのことだ」


 訝しむ声に、乾いた声で答えが返る。眉を顰めて、背中を睨み。
「いい加減しつこいわよ。僻み男」
「誰がだ。……茶化さないでくれ。
 君はマスターとしては得難い人物だが、いかんせんイレギュラーが過ぎる。私の知る限りだけでも、不安要素は掴んでおきたい」
 ……腹立だしいが、こいつの台詞は我ながらもっともだと思う。
 まあ―――隠す程の、事でもこといんだし。  
「―――先に言っとくけど。別に情けを掛けた訳じゃないんだからね?」
「ふむ。確かに、情けを掛けた『だけ』ではないのだろうがな」
 ……踏み付けるだけでは物足りないかもしれない。



 ……衛宮士郎の元・サーヴァント。剣の英霊たる少女、セイバー。
 仮初めとは言え交わした契約に従い、彼女がわたしのもう一人のサーヴァントとなってから既に数日が経つ。
 彼から無理矢理剥がした令呪。兄弟子から齧った程度の技量では、丁度三分の一しか―――つまり、一回分の命令権しか得ることは出来なかったけど。
 それでもただのその一回で、彼女を縛るのは容易いことではあった。
 ―――少なくとも。労力と言う、面だけから見れば。


 
「『遠坂凛への害意が消えない限り、人間並みの力しか振るえない』―――か。どうにもこうにも、君らしい」
「……『主替えに賛同しろ』とでも言えっての?力の半減したサーヴァントを二人従えたって、無意味でしょうが」
「無意味と言うならば」
 振り返り、こちらを見据え。
「彼女を屋敷に置いておくこと自体、そうだと思うがね」



 ―――本来は力の制限などでなく、現界そのものを禁じたかったのだけど。
 激情のままに振るわれかけた光の剣、そこから知れた彼女の出自。
 未だ現世に在る、円卓の騎士王。
 酷く特殊な性質を持つ英霊であるが故に、あの少女は霊体となることが適わない。
 結果として、今のセイバーは半ば以上は無理矢理に、遠坂の屋敷に監禁の身である。ただの人間並みの筋力、身体能力では。遠坂の結界、その一部である窓の一枚すらも破れない。
 ……わたしを見やる眼光だけは、薄ら寒い程のものが有るけど。



 皮肉な色を、瞳に浮かべ。
「例え令呪で縛った結果、君への負担は殆どなくとも。未だ他の敵に関しては情報が皆無と言って良い。
 他人のサーヴァントを無理矢理奪い取る様な術がないとは限らん」
「……考え過ぎよ。それこそ魔法の域じゃない」
 でも、確かに。どちらに理が有るのかと言ったら、それは間違いなくこいつの方だ。
 だって。遠坂凛が剣の英霊を捕らえた理由、なんてのは。
「―――見届け役」
「……何?」
 怪訝な声に答えず、歩む。背後から続く、その堅い足音を聞きながら。


「だから、セイバーを残した理由。―――最後まで、見て。聞いて、もらおうと思ったのよ。遠坂凛と……アーチャーの、戦争を」


 ―――衛宮士郎。
 彼を撃ち、この戦いから脱落させたことを。わたしは今も、後悔なんてしてはいない。
 あいつは無知で、未熟で、愚かで。―――それより何より、日常の方が相応しい。
 ……今に、思えば。尚更強く、そう思う。少女の日常の中、ただ唯一の希望の少年。
 結果的に、とは言え。わたしが巻き込んだ人外の戦の中で、その彼がもし消えでもしたら。



 遠坂凛は。間桐桜に、一生逢わす顔がない。



 ―――けれど。
 後ろの彼を、胸中想う。命を賭してわたしを護り、恐らくは―――負けるだろう賭けでも、きっと立ち向かってくれるだろう、赤の騎士。
 多分、きっと。それは彼女と、衛宮士郎も同じであった筈だから。
 だから、せめて。
「許してもらおう、なんて思ってる訳じゃないけどね」
 衛宮士郎との絆を奪われ。主を護るに至らなかった。
 その、青の騎士に刻み付けた深い傷跡には。
「それだけの価値が。意味が、有ったんだ、って」
 例え、納得など。理解など、してはもらえなくとも。
 ……ただ一時。聖杯を巡る敵としてではなく、仲間として―――友人として、食卓をすら囲んだ少女に。


 ただ。
 その結末を見届けてもらうことだけが、わたしに出来るけじめ、だと。


「―――ふん」
 ぼそぼそ続けた釈明に、不機嫌そうな哂いが応えた。
「だから言ったのだ。奴等と協力などすべきではない、と」
「……出会って早々に殺られかけた奴の台詞じゃないけどね」
「ぐ―――」
 絶句の声に、笑みが零れる。相変わらずに背は向けたまま、辿りに着いたその場を見やり。
 ―――大きく、息をひとつ吐く。



 ……間桐、慎二。
 わたしのクラスメイト。魔術回路の閉じた魔術師。ライダーの、マスター。
 ―――桜の、兄。
 そして、自分の学び舎に物騒な結界を張らせた張本人。
 問いて質した彼の口から、溢れに溢れた間桐の闇と。
 ―――呑まれ。未だにその裡に在る、少女の姿を想って描く。



 『マキリ』の館。
 その扉。黒々と開いたその闇を、舌打ちをして睨み付け。
「―――アーチャー」
 滲む汗。館の前で、気付いてはいた―――あの爺が、どれだけのレベルの魔術師かなんて知ったことではないけれど。
 威圧。圧迫。剣気に殺気。これ見よがしに外の『客』へと向かって漏れる、この悪いユメ染みた気配は。幾ら優れているとは言っても、魔術師に―――人間なんて代物に、放てる様なものではなくて。
「手間が省けた、と言うところか」
 何とも無しに、平然の態で答えを返す。二刀を携え、嫌味な瞳でこちらを見据え。
「怖気づいたかね?」
「―――冗談」
 ……うん。
 手間が、省けた。
「サーヴァントは任すわよ。わたしはあいつの相手をする」
 これ見よがしに窓に閃く、白い髑髏の姿を睨み。
「承知した。―――凛」
「なによ」
 歩みのままに、答えを返す。彼は刀を、わたしはルビーを。その手に構え、息を吐き。


「……宝石を惜しむなよ。命には代えられん」
「……あんたは……」









「―――へ?」

 胡乱な頭で、間抜けた声で答えを返す。
 俯く彼女。零れた言葉を噛み締めて、胸中幾度も吟味して。
「……何でさ」
 それでもやはり。返す言葉は、自覚はすれど要領を得ない。
 口元に手を遣り、記憶を漁る。―――昨日、自分が眠る間に。何があったか、思いを馳せて。
 ……火事に地震に、雷に。知る限りでは、憶えがなかった。臨時休校中の、昨日の様に。丸一日のその間、外界を窺うこともない、暗い土蔵に一人籠もっていたとは言っても。


 深山町でもかなり大きな、間桐の屋敷。
 そんな代物が倒壊する程、何かが遭った憶えは無い。


「……桜」
 『―――家が、無くなっちゃいました』と。虚ろな笑顔で呟いた、少女の肩に言葉を投げた。
 時刻は既に夜の最中。毎晩訪れる藤ねえも、ここ何日かは姿を見ない。
 新聞でも小さくとは言え取り上げられた、原因不明の集団昏睡事件。
 学園内で起こったそれは、幸い然程に重度の被害は出さなかったとは言え。被害者のその数だけは、発生時の夕刻に学校内に居たほぼ全員―――百人単位の数に至る。
 藤ねえ自身も巻き込まれたその事件。元々の体力が違う所為か、本人はすっかり回復していた様ではあるけど。クラスの皆を見舞うだけでも、かなりの手間にはなるだろう。諸々の雑務も相まって、藤ねえは最近は寝る暇も無い忙しさという。
 自分はともかく、目の前のこの少女がそれを逃れたことに加えて。
 ―――桜の兄。慎二がそれに巻き込まれ、家を空けていたのは不幸中の幸いと言えた。
 一度見舞ったその様相は、悪夢にうなされでもしているかの様に酷い有様だったけど。
「……あ、心配しないで下さいね?」
 ……無理な笑顔が、逆に痛々しい。散々鈍いと美綴に揶揄された自分。疎いその目に分かる位に、虚勢を張った少女の笑顔に、逆に怒りが湧いて来る。


 ―――こんな、時くらい。


「藤村先生のお祖父さんが部屋を貸してくれる、って仰ってるんです」
 美綴は言った。このところ桜には元気がなかった、と。
「兄さんだって、一週間もすれば目を覚ますだろう、ってお医者さんが」
 衛宮士郎は気付かなかった。恐らく自分に最も近い、笑顔の少女が沈んでいることすら。
「……他の―――家族、は。今、忙しくって帰っては……」
 語る少女に、睨みを向ける。
「だから、兄さんが起きるまでは、藤村組の皆さんにお世話に―――」


「桜」


 我ながら冷たく、厳しい声。桜の笑顔がひび割れ抜ける。脆い硝子の笑顔を誤魔化す為の長広舌も、鞭に打たれたかの様に勢いをなくしぴたり、と停まり。
「桜」
 もう一度。無愛想を装い、少女の名を呼ぶ。……何かを怖れるかの様な顔。怖がらせるのはこちらとしても、不本意ではあったけど。
 ―――正直言って。胸に浮かんだ続きの言葉を告げるのは、かなり恥ずかしくもあったし。
 それに。



「ここに居る」
 実際。久し振りではあった。
 ……ここまで、腹が立ったのは。



「―――え?」
 憂いを消して。きょとん、と忘我を浮かべる桜。
 確かに、衛宮士郎と言う人間は無知で未熟で、愚かに過ぎて。
 目の前の少女に『そう』思ってもらえないことの、責が在る訳では無いけれど。
 それでも。


「……俺は、桜を家族だと思ってる」


 一年と半。殆ど毎日衛宮の家を訪れる、この少女の笑顔に。俺が―――どれだけ、助けられていたことか。
 殊に、最近。夜が来る度訪れる得体の知れない喪失感に、底の知れない後悔に。
 闇の中で一人囚われるその度に、自分が朝に昼に夜。間桐桜という存在が、自分を支えてくれていた事を思い知らされてきた。
 それなら。―――今度は、こっちの番だ。


「雷画の爺さんに世話にならなくったって―――ここに、住めば良い」


 ―――そう。今までと、大して変わりが有る訳でもない。
 朝には交代で、時には協力して手早く食事を拵えて。おにぎりをこっそり作る桜を横目に、学校で食べる弁当を詰め。
 夕方には大抵俺の方が早く帰る。食卓の準備。桜と藤ねえと自分との、騒がしくて楽しい夕食。後片付けは桜に甘え、ゆっくりとお茶を飲みながら他愛のない会話を交わして。
 ―――今までと、大して変わりが有る訳でもない。


「……爺さんは良い人だけど。それでも桜もうちの方が、気兼ねなく暮らせるだろ?」


 そうしてくれれば自分にだって、幾つもやれることがある。一番広くて綺麗な部屋を、徹底的に掃除して。朝は桜の好きな和食を。必ず桜より先に帰って、家事に勤しむ。一番風呂を譲る間に、家計度外視の食事の用意。後片付けの後のお茶には、江戸前屋のたい焼きとどら焼きを。毎日取り替える日向が香る布団の中で、ゆっくり休んで貰える様に。
 ……我ながら所帯染みた貢献ではあるけれど。


「―――桜。こういう時くらい、頼りにしてくれないか?」


 気恥ずかしさに、僅かに背けた視線を戻す。相も変わらず、呆然としてこちらを見やる藍の双眸。
 そこに浮かんだ雫が零れ。


「え」


 流れて伝うその様相に、落ち着きかけた心臓が跳ね上がる。慌てて近づき、肩に手を遣り―――
 そのまま、羽か何かの様に。


「……ん、ぱいっ……!」


 ―――傾いで落ちて。胸元に強く、しがみ付く。嗚咽に紛れ、自分の名を呼び続ける少女の肩を、ぎこちなく強く抱き締めた。

 

 ……泣き疲れ、眠る彼女の肢体は。まるで苦にはならなかったとは言え、案外結構重かった。









『―――ところで凛。一つ確認していいかな』


 ―――分かって、いる。
 黒一色の森の奥、白亜の城の内深く。
 心ならずも震える脚と、歪む視界に舌を打つ。―――こいつは、正しい。
 間、僅かに四間。こちらまで一息とすら掛からぬ位置で、虚ろな殺意を滾らすそれを、鞭打つ心で睨み付け。


 アーチャーは、正しい。


 わたしは最早、こいつの枷としか為り得ない。今の一撃ち。放ち砕いたその一撃で、十七年の歳月はその一切を微塵に散らせた。
 ……そいつを見やる。真白の少女の傍らに立つ、鉛の色の死の具象。たった今までその頭から覗かせていた、白い骨すら既に見えない。


 『バーサーカー』。


 狂える大英雄ヘラクレスの秘蹟、『十二の試練』。
 あと十と一回の数、この神の末裔を、殺すなんてコトは。
 ―――恐らく、きっと。逃げることすら出来はしない。背を向けて身を翻し―――その瞬間に、あの石くれは遠坂凛を血塗れの肉塊へと変えるだろう。



 ……それなら、せめて。
 最期の最後まで、こいつの隣に。



「らしくないな、凛」
 平然と返る答えに、視線を投げて。
「早く逃げろ。か弱い女性を護るのは、騎士の務めだ」
 こんな時まで変わらない、皮肉な笑顔に怒りが灯る。泣きたい位に頼りない、爪の先程の宝石を汗滲む掌に握り締め。
『……冗談』
 口には出さず。震える『声』で、答えを返す。


 『アーチャー』。
 記憶を失った英霊。
 誰とも知れぬ、無名の英雄。
 遠坂凛の、サーヴァント。


 ……こんなへぼ騎士が、あのバーサーカーと戦ったところで。
『時間稼ぎにもなんないわよ。二人が生き残る方法を考えて』
「無茶を言う。私は名も無き弓兵だぞ?」
 困った様に、目尻を下げて。


『―――例えば。
 聖剣を携えた騎士王ならばともかく、な』


 自分一人はここで死ぬ、と。
 か弱き主に、笑顔で告げた。



 ―――だから。
 歪む世界を、疾って駆ける。茜に染まった黒い森、帳が下りる間際の薄闇。
 ……ああ。やっぱりだ。正解だった。
 遠坂凛は、賢明だった。
 言わなくて、良かった。
 交わさないのが、正解だった。
 あんな約束、なんて。



 ―――遠坂凛の、サーヴァントは、最後まで―――



 ……アーチャー。
 あんたは良く、知ってると思うけど。
 わたしは無知で、未熟で、愚かで。
 傲慢で、甘くて―――自分勝手な、マスターなんだから。
 ましてわたしは一介の魔術師。一方あんたは曲がりなりにも、英雄の端くれなんだから。



『ああ。時間を稼ぐのはいいが―――別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?』



 ―――約束を、守る。
 わたしに出来なかったことでも、それが身の程知らずの大言壮語でも、あんたにだったら出来るって。
「……構わないからね……!」
 それに縋って。わだかまる闇を掻き分け、駆けた。





「―――死ぬなよ。遠坂」













「……随分と上機嫌だな。衛宮」


 時刻は昼。
 漸く再開を果たした平和な学校生活。疎らに空いた教室で、身の入らない授業を受けて。
 終わりを告げる福音の、終わらぬ内に駆け込んだ。
「―――そうか?」
 無骨ながらも整えられた、居慣れた生徒会室の内。怪訝な顔でこちらを見やる、見慣れた彼に答えを返す。
 ……流石、付き合いが長いだけのことはある。
 衛宮士郎は今朝からずっと、珍しいくらい浮かれている、と。自分自身でもそう思う。
 初めてと言う訳でもないのに、何でこんなに嬉しいのかと、疑問に思ってしまうくらい。
「ああ。―――まあ、善哉。最近の衛宮は、どうにも挙動が不審だったからな」
「……不審、って」
 深刻な顔をしているかと思えば赤くなったり青くなったり。妙に気を張っている様で、と。
 どこかで最近聞いた様な、指折り告げる彼の指摘に苦笑を返す。
 ―――余程に俺は分かり易いのか。
 哄々、と一転、晴れやかに微笑って。
「ま、確かに最近は色々とあったからな。衛宮が巻き込まれなかったのは僥倖だった」
「一成もな」
 友人の言葉に笑い、頷く。柳洞一成―――柳洞寺の息子であるこの友人は、毎日歩いて二時間の距離を踏破して登下校する。それが故の早い下校が、例の事件に巻き込まれなかった理由でもあった。
 取り留めのない会話を久しぶりに交わし。
 安っぽい、こちらも座り慣れたパイプ椅子を引きながら手に持つ包みを卓に置く。ずっしりと重く、存在感を伝えるそれが、衛宮士郎をこの教室に駆け込ませた原因だった。
 標準サイズの、日頃に使う弁当箱。長方体の筈の包みが、今日に限って直方のなりをしているのには訳がある。
 布を解く。一つに二つ、三つに四つ。煮物に揚げ物、サラダに果物。本体の方も色取り取りのおかずで彩られている上に、更に取り巻く惣菜の群れ。
 ……複雑な目でこちらを見やる、友人の眼を黙殺し。
「―――頂きます」
 合掌の後、箸を取る。……似たり寄ったりな朝食の後。衛宮士郎と言う学生は、実はそんなに大食ではない。普段に食べる食事の量は、野生の藤ねえのみならず桜にだって劣る程だ。


 ―――なのに、この量を苦も無く食べ切れてしまうのが自分でも不思議だった。


「喝」
 確、と苦笑を滲ませて。
「俺もまだまだ修行が足りん。全くもって元気な様だな、衛宮」
「……おかげ様でな」
 笑う親友の、手ずから淹れた緑茶を啜る。幸福感に充ちた味覚に、僅かな苦味が心地良い。
「ところで衛宮」
「ん?」


「誰の作だ?」


「え」
 ……湯呑みから長閑に立ち昇る湯気。鼻梁をそれに撫でられたまま、強張る視線を彼へと向ける。
 笑っていない笑顔を浮かべ、湯気を隔てて見詰める一成。
 ―――いや。充分足りてると思うぞ。親友。


「……さくら」


 迫力に負け、素直なままに答えを返す。……まあ、隠す程の事も無い。
 間桐桜と言う後輩が、衛宮の家で朝晩と食卓を囲んでいることは一成も知っている。今更隠し立てしても仕方ない。
 ……なんでこいつがこんな迫を纏っているのかは、見当も付かないけど。
「―――ぬ?」
 威圧が消える。虚を突かれたと言うかの様な、訝しむ声に視線を返し。
「どうかしたか?」
「……いや……それは本当か?衛宮」
「嘘吐いてどうするんだよ」
 藤ねえが作ったとでも思っていたのか。大体にして、俺の周りに料理が上手い奴で、加えて弁当を拵えてくれる奴なんて、桜の他には―――居ない、訳だし。
 返した言葉に、眉を顰めて。
「……間桐君か。にしても、これが初めてと言う訳でもないだろうに」


「―――まあ、色々あってな」


 ……そこまで分かり易く、浮かれていたのだろうか。こいつに詰問される理由は分からないにしても、もう少し自重した方が良いかも知れない。
 変に噂にでもなったら、迷惑するのは桜の方なんだから。
「―――む」
 思いに耽った意識を返す。何やら難しそうでいて、尚且つ悲壮感の漂う表情。寄せられた眉が、その煩悶の重さを強く思わせる。
「……一成?」
「―――むむ」
 答えとも付かない、苦しげな呻きを返し。―――瞼を、閉じて。
「……うむ。彼女なら……。少なくとも、奴よりはずっと……」
 意味の不明な呟きを洩らし。
 何処か、寂しげな微笑を浮かべ。
 達観の目で、こちらを見やり。


「―――幸せにな」


「……お前こそ大丈夫か?一成」
 どうもこの親友は、今日は様子がおかしい。一体何が有ったのやら。
 俺の言葉に、一成は険悪に目を細め。
「ふん。……余計なお世話だ」
「?」
 取り敢えず。先程までの、重苦しい威圧から解放されたのは有り難い。少し温くなったお茶を一息に乾し、息を吐く。
 暫し、無言に間が流れる。……随分と久し振りな気がする、平和な凪の時間。
 ここ最近の衛宮士郎には、色々なことがあり過ぎた。そんな気がする。何処かピントの暈けた記憶は、ここ三日間の衛宮家の暮らしの中で徐々に薄れてきてはいるけど。


 心安らぐ暇もない、と。その観点で論じるならば、今も以前も大差無い。


 今に思えば。藤ねえという存在は、衛宮の家でのある種の緩衝材になっていたのだと思う。衛宮士郎の周りに於いて家族のその座に最も近く、同時に教師という立場から監査の役をも担った彼女。
 ……幼い時から姉として。共に暮らして過ごした彼女すら、そういった対象として見た回数は絶無ではなく。
 況や、『家族』とは言えど。一年と半年の以前からしか知り得ない、藍色の髪の少女に、なんて。



 意識しない、と。下手な嘘すら、自分にすらも吐けなくて。



 藤ねえとは最近は学校内でしか会わない。会えば弱音と甘えを駄々に洩らすけど、それでも自分の仕事と―――何よりも。自分の教え子達を元気付けることに全精力を傾ける、その姿には。久方振りに自分の『姉』に、敬意を覚えてみたりして。
 ……実際問題、桜のことがバレでもしたらそれこそ衛宮家に猛虎が荒れ狂うのだろうけど。今はただ、存外に悪戯好きな爺さんの演技と策に期待を寄せるだけだった。
 最も、例え。藤ねえが幾ら反対しようとも、今更その気を変えるつもりは、ないのだけれど。
 ないのだ、けれど。


「―――はあ」


 いや。溜息を吐くようなことではない。家族と離れ、帰る家さえ失って。
 加えて何故か憂いに沈んでいたという、彼女。間桐桜はこのところ、眩いくらい輝いている。
 ……それはもう。藤ねえが居ないことすら、時折忘れてしまうくらいに。
 元々暗くはないにせよ、衛宮の家ではどちらかと言えば物静かだった、桜。
 ……一つの屋根を共にして、三日。当初は何故か、滑稽なくらい真っ赤になって緊張していた少女は今や、不在の家人を補って、余りある程に明るくなって。
 それは、物凄く喜ばしいことではある、筈なんだけど。
「……何を悩む、衛宮」
 怪訝な声に、虚ろな笑顔で手を振って。
 遠くない放課後。茜と黒の空の下、藍に染まった衛宮の家での暮らしを想い。



 二人の食事を拵える中、妙に寄り添い触れる肩。
 手ずから淹れるお茶を手渡す、さり気無く握る温かな掌。
 ……耳を掻く、その反対で感じる熱と、弾力と。
 ―――泡とお湯とに塗れた背中を、優しく撫でる布と吐息を。


「…………」
 際限無しに脳裏を染める。


 取り止めも無い、桜の色を振って払った。 










『―――ただの、一撃で』


 崩れて落ちる、鉛の巨人を暗転し落ちる視線で睨む。
 ……もう、身体が動かない。サーヴァントのフォローが有ったとは言え、この狂戦士は正しく生ける災害だ。直接触れず、近付かずとも。戦いの場に在ることすら、魔術師とは言え人の身には酷で。
 ―――加えて。
 恩知らずとも、失礼だとも思うけど。実際まさか、ここまで『喰われる』とは思わなかった。
 ……四度、こいつを滅ぼした彼。そういう意味では、彼は確かに。


 ―――燃費が良いのねと伝えでもしたら、どんなかおをしたのだろう。


 今はもう叶わない想像を胸に、もう届かない悪態を。


 ―――居ても居なくても、変わりない様な、奴だった。


「ふん。やっぱり、あんたは」
 ……緊張感が、解けた所為か。向けた視線の先。元々暗く、溜まった雫に歪む視界が一気に狭窄する。
 くらり、と廻る世界の中で。


『この身を、七度も滅ぼすとは』


 狂える英雄の。断末を告げる言葉を聴いて。
 ―――もう一度。気力を振るって、瞼を開ける。


 闇夜の森に、一際映える。
 赤に塗れた、青の騎士。


 鎧は半分以上が砕け、紅に覗く傷跡からは白いものすら見て取れる。剣を杖に、落ちる身体を支えて居立ち。
 疎らに流れる、黄金の髪すら凄絶な赤と黒とに彩られ。
 ……無言のままに空色の目でこちらを見やる、揺れて強張る、ぎこちない視線。
 ―――くく。
 胸中、微笑を返して浮かべた。……気にしなくて良いってば。
 魔術師の信条、遠坂凛が全てに於いて世の理と信じるそれは、願いには対価が必要というコトなのだから。
 詰まる所。


 意識をしての、過分と言えど。彼女が振るい、戦って。
 ―――鞘を払ったその代償は、わたしが払うべきものなのだから。


 ……ま。やってくれたな、とはちょっと思うけど。


 今度は些か憮然と思う。粘りに粘り、下げに下げ。拝んで伏したその結果、今の彼女は遠坂凛と共に在る。
 律儀な彼女は、据わった瞳で事前にちゃんと告げたけど。


 ―――やっぱり、あんたは食いしん坊よ。

 
 無尽に吸われる魔力の果てに、残るは地獄の疲労と睡魔。
 ―――それでも、彼女が。あれから初めて、わたしに対して感情らしき物を浮かべてくれたのは、素直に嬉しかった。
 ……うん。
 これからも。よろしく、たのむ、ね。
 ……落ちる視界。彼女に投げて、無明に閉じる意識の隅で。
 同じ言葉を、サーヴァントへと投げ掛ける。


 ―――うん。
 やっぱり、あんたは。


『……へぼ、きし、よ……』
 主に、余計なとこばかり似た。
 もう居ない。彼の背中を、想い描いた。











 ……茹だる頭を、夜風に冷やす。冷たい空気、白く霞の掛かる息。
 二月も半ば。寝間着を通して伝わる冷気は寒くはあるが、今の自分には丁度良い。
「―――はあ」
 吐息を一つ。


 ―――俺は、桜を家族だと思ってる。


 あの夜、暗く俯く少女に。告げた言葉は、紛れも無い心底からの思いだった。それは今でも変わらない。
 切嗣からの教えとか、床に臥せった友人への義務感とか。諸々の事情は確かに有って。
 幼稚な、単純なその思い。―――正義の味方は、泣いている女の子を放ってなどおかない、と。
 そんな思いも、確かにそれは有るのだけれど。
「―――ふう」
 吐息を一つ。


 ―――ここに、住めば良い。


 ……思い出すだに心が火照る。激情に衝かれたとは言え、これも同じ。衛宮士郎が間桐桜に投げて放った、心底からの想いの言葉。


 後悔している訳じゃないけど。
 誤解されても仕方がない、と。


「……誤解、かあ」
 胸中、我ながら頼りのない呟きを洩らす。あの時は。そんなことなど、思ってすらもいなかった。
 思う。……つい最近までの、衛宮士郎と間桐桜の関係を。楔となって支えたものは、一体何であったのか、と。
 一年と半年もの間。今に見れば、そんな中で殆ど彼女を意識しなかったのは奇跡と言っても過言ではない。
 ……自分の甘さに、吐息を三つ。


 毎朝、自分を起こしてくれて。
 たまには一緒に、昼飯を食べ。
 夜の帳が下りるまで、談笑しながらお茶を飲む。


 ―――その後の寝床が近くなるだけ、と。

 
「……甘く、見てたよなあ」
 最近めっきり姿を見せない、藤ねえという存在を考慮の内に入れてたとは言え。


 桜と一つの屋根の下。
 その日常の甘美さは、予想の内ほど甘くはなくて。


 ―――冷たい縁側。夜風に濡れた木目の床に、腕を枕に寝転がる。
 考え過ぎると意識に還る。ただでさえ加熱に傾きがちな思考回路を、夜風に冷まして考えた。
 桜の見えない、最近の記憶。相も変わらず朧に隠れた、数日間を経た後の―――
 その、中には。
 ……何故か碌でもない様な、噂が溢れていた様な。


 街外れの墓地がそこだけ焼け落ちていて、祟りがどうのと評判になっていたりとか。
 先日の事件。複数の生徒が証言するには、堕ちて消え去る翼の生えた馬の姿が見えたとか。
 丘の上。柳洞寺の池には、亡霊だか落ち武者だかが夜毎に現れる、とか。
 この眼でも見た。遠くの森から夜空に伸びる不思議な光。未だに原因は分からない。

 
「しょうも無いよなあ。ホント」
 綺麗な黒の天幕を見上げ、瞼を閉じて苦笑する。藤ねえのみならず一成も美綴も、案外こういった与太話は好む方だ。勿論の事自分も含め、信じてなどはいないけど。


 ―――単なる幻覚だろ、そんなの。


「……う」
 思い、寒さに身を竦ませる。何の気なしに返した言葉。一成と話をしていたその時に、見やる視線を思い出す。
 昔、遠い昔。切嗣が話してくれた事がある。世界には、力有る『眼』が存在すると。
 金縛り。活力奪取。呪いに眠り、石化に魅了。その中には死神の様な物騒な力を持つものまで有ると言う、その両眼を『魔眼』と言って―――
 ……なら、あれもそうかも。
 名前も知らない、数日前に初めて見かけたその姿。自意識過剰に思うのだけど、最近何故か無闇矢鱈に視線を感じる。


 非の打ち所の無い美人なだけに、睨むそのかおは竦み上がる程怖かった。


「……なんかしたかなあ。俺」
 心当たりがまるでない。堪り兼ねてこちらから話し掛けようとすると、何故だか気まずそうな顔で逃げてしまうし。
 一成にどんな奴か聞いても、『女狐』『関わるな』と吐き捨てられるだけだし。
『―――大体、衛宮。お前には間桐君が居るだろう』
 あんな女に目をくれている場合か、と。
「……別に、そういう思惑はないんだけどなあ」
 呟く言葉は、本心だった。遠坂凛と言う名の少女は、それは確かに美人だとは思うけど。
 気になっているのは単に、『観察』されるその理由が分からなかったから、だけで。


 衛宮士郎にとっては。
 間桐桜の方が、ずっと―――


 ……夜風に冷ます。刻む時刻は宵の内。こんな時間に意識をしたら、それこそ何を仕出かすことやら。
 気を取り直す。努めて桜の居ない記憶を。一成と二人、取り留めのない会話なんかを思い出す。
 例えば。


 穂群原名物の堅物教師には、実は凄く綺麗な彼女が居て。
 毎日同じ屋根の下、見てて微笑ましい位に甲斐甲斐しく世話を焼かれている、とか―――


 ……冷たい床に顔を埋める。
 そう言えば、近所の人がよく言っていた。ふらりとこの街を訪れ、藤村組の下に居を構えた青年。
 衛宮切嗣。衛宮士郎の、命の恩人。育ての親。―――理想の、姿。
 彼に対する評価としては、優しそうだとか飄々としているとか、概ね好意的なものが多かったのだけど。
 それら評価と同じくらい、特に女性の人からは。
 決して悪口、非難の類じゃ、なかったけれど。
 同じ様な感想を、何度も聞いていた様な―――


「……いや、俺は違うぞ」


 空に向かって、抗議を返す。切嗣は俺の目標であって、大好きでもあるし尊敬もしている人間だけど、少し度が過ぎている所はあった。一緒に散歩をしている最中、何度歯が浮きそうになったことか。
 ……うん。違う。
 俺は切嗣ほど女の人の扱いが上手くないし、優しくないんだから。


 唯一人だけ。
 隣の、少女だけで良い。


 行儀も悪く、転がりながら仰向けに。瞼を擦り、目を開ける。ずっと瞑っていた為の、早い眠気に欠伸を一つ。
 ―――萌黄の色に灯る障子に、胸を抑えて視線を投げた。桜が入浴を終え、台所へと移動する影が何故かこそこそ廊下に消える。
「―――桜?」
「……っ先輩?」
 頓狂な声に、腰を上げる。……ゴキブリでも出たんだろうか?
「何かあったか?」
 駆け寄らず、障子越しに声を掛ける。……衛宮士郎と言う人間は、ここ数日でめっきり慎重になってきている。
 一昨日の様に、風呂上りの桜と正面から対面する様なことになれば。―――正直言って、自信がないし。
「―――いえ」
 わたわた、と。何処か微笑ましい態で、細身の影絵が両手を振って。
 こほん、と咳払いの音。影絵が動く。腰に手を当て、指を突き付け。
 間桐桜と言う名の少女は、見たこともない格好で。


「―――今日は、もう休んで下さい。先輩」


 聞いたことも無い、強い口調で言って放った。
「……休め、って」
 思わず廊下の時計を見やる。時刻は九時。衛宮家の夜は割と早いが、幾らなんでもこんなに早く。
 ……それに、まだ。
「―――えっと。お茶が飲みたいなー、とか」
「明日にして下さい」
「はい」
 間髪すらも入らぬ声に、反射で素直な答えを返す。……今日は何だか、桜が怖い。
 立ち上がる。理由を聞きたいのは山々だけど、藪を突付くには勇気が足りなかった。
 ―――それにしても。
「……お休み、桜」
「はい。―――すみません、先輩」
「良いってば」
 桜だって女の子だ。男の俺には窺い知れない、事情が色々有るんだろうし。
 けど。


「……明日は、桜がお茶を淹れてくれよ」


 食後、寛ぐ二人の時間。
 たった一日とは言えど。それが持てないと言うだけで、ここまで残念に思うのが自分自身でも意外ではあった。
 ……女々しいとは思うけど。
 一拍置いて、微笑った声で。
「―――はい」
 返った言葉は、とても嬉しそうな、何故か誇らしげな声で。


「……取って置きのお茶請けも、用意しておきますから」
「ん。期待してる」


 そういえば、さっきから微かに甘い香りが漂ってくる。―――なんだろう、これ。
 最近何度も、嗅いだ事が有った様な、強い、甘い、お菓子の―――
「おやすみなさい、先輩」
「……ん、明日な」
 我に返って、土蔵へ歩む。再び火照った頭を冷ますには、丁度良い場所。庭を横切り、古びて錆びた扉を開けて。


 壁にもたれて、桜の色の夢を見る。


 ―――いつもここでは酷かった、左の腕の痛みと疼き。



 気が付くと、すっかりそれは消えていた。











 ―――夜の帳を、背に構え。
 主を失い舞い散り融ける、黒衣を横目にそいつを睨む。月下にそびえる姿は黄金。
 ……恐怖に圧されて言葉が出ない。アインツベルンのバーサーカーとは、また違う。
 威圧は凄まじいながら、欠片ほども殺意を感じないのが逆に恐ろしかった。
 こいつは―――息をするかの様に、当然の権利の様に、他者を滅ぼす。
 これも正しく。古代、神話や伝説に謳われる、『英雄』の姿。
 人間が相対するには酷な、人外の化生。


「待ち侘びたぞ。―――十年越しの答えを聞こう、セイバー」


 薄く哂ってこちらを見やる、黄金のそいつに剣を構え。 
「―――一つ訊きます。何故貴方が現界しているのです」
 果てしなく、苦い口調を舌に浮かべて。


「―――アーチャー」













 ひたすら甘く、ほのかに苦く。味蕾の上で儚く融ける、『取って置き』。
 渋茶を啜り、また手を伸ばす。綺麗な大皿。その中央に盛られたそれは、数にして五十は下らない。闇夜の様な黒を主体に、柔らかな白や深い焦げた茶。その全てが一口程の大きさとは言え、ハートの形をとっているのは思った以上に壮観だった。
 口の中へと摘んで放り、茶を啜り。―――味は勿論、申し分がない。間違いなしに、衛宮士郎が今までに食べたそれの中では随一だ。
 作り手の腕と。何より貰った相手のことが、加味されているのを差し引いたとしても。
 お茶を注ぐ。もう三杯目。決してしつこくはない極上の甘味を、未練たらしく洗って落とす。
 ……そう言えば。胡乱な頭で思い出す。藤ねえにも以前、同じことを強要された覚えが有る。
 あれは市販品だったし、俺もまだ子供だったし、何より相手が藤ねえだったけど。
 ―――それでもやっぱり、無闇に火照った両の頬を、触られ抓まれ弄くられ。散々にからかわれた。
 無言のままに、四杯目。


「―――先輩?」
 卓に肘を付き、折った手の甲に頭を乗せて。満面の笑みでこちらを見やる。


「ん」
 短く応え、目の端だけで視線を投げた。……やはり、これは。隠れたいくらい、照れくさい。
 その日の事はすっかり忘れていた為に、夕食の後に出て来たそれは完全な不意打ちだった。
 一つ年下の桜。にこにこと幸せそうな笑顔を向ける少女の瞳に浮かんだ色は、かつて藤ねえが見せたものととても良く似ていて。
 ……照れて慌てる、世慣れのしない年下を。余裕と微笑ましさで以て、愉しんでいる、眼。
 昨日のことを思い出す。―――まさかとは思うけど、桜。これがやりたくて隠したのでは。
 湯呑みを片手に、溜息一つ。あの伏し目がちだった少女は、成長したと言うべきか。朱に染まったと言うべきか。
「美味しいですか?」
 言わずもがなのことを聞く。
「……ん」
 ―――既視感を感じる。こんな感じで、甘い真綿で首を優しく絞められる様な、そんな虐めを受けた記憶が有る様な。
 胡乱な視線を、卓へと向ける。



 色取り取りのチョコレート。
 綺麗に積まれたハートの山は、一向に減らず崩れもしない。



 湯呑みを挟み、ただ一心にそれを齧る。
 テレビの音が、やけに大きく頭に響いて―――
「……先輩」
「ん」
 三度続いた呼び掛けに、短く答えて頭を上げる。
 ―――なんか桜の様子が変だ。
 俺も人の事は言えないんだけど。顔は赤いし、視線も揺れて定まらない。ついさっきまでの余裕も消えて、一言で言って挙動が不審。口から漏れる呟きも、要領と言うか意味を成さない断片で。
「どうした?桜」
「あ―――その」
 すう、と。一息、大きく吸って。


「……先輩……は、わたしのこと、桜って呼びますよね」
「?―――だって、桜は桜だろ」


 決意の顔で告げた言葉に、意表を突かれて面食らう。思えば一年半の以前から、桜のことはずっと名前で呼んでいた。疑問に思ったこともない。
「いえ。そういう、意味じゃなくって」
 昔に戻ったかの様に、視線を伏してぼそぼそと。


「―――先輩、この間……言いましたよね」
「何をさ」
「……わたしのことを、家族だと思ってる……って」
「―――う」


 ……流石に本人の口から確認されるのは気恥ずかしい。まさか桜、俺を苛めてるつもりじゃないんだろうけど。
「言った」
 照れを隠して、短く答える。誤魔化すつもりはなかったし、それにこの話題は出来るだけ早く終わらせたい。自分でも思い出す度に、悶絶物の『告白』なのだから。
「……ならですね、その」
 両の指先で、虚空を編んで。


「―――家族なのに。わたしの呼び方は、変だと、思うんです、けど……」


 桜の、呼び方、って。 
 ―――『先輩』。



「―――いや待てそれはちょっと!」
 確かに桜の言い分はもっともだし、同じ『家族』の藤ねえはそう呼ぶけど!
 それは、拙い。危ない。
 桜にそんな呼ばれ方をしたら。


 本当に、そんな、関係みたいじゃ―――


「じゃあ一度、試してみませんか!?」
 悲鳴染みた俺の答えを、被せて隠す様にして。身を乗り出して、視線を近く。
 言った言葉に不意を付かれて、思わず呆、と動きを停める。卓を挟んで、藍の少女と向かい合う。
 吸い込まれそうな、深くて透き通った海の色。
 両の瞳に映って溺れる、自分の姿と見詰め合い。



「……士郎、さん」
 ――――――卑怯だ、それ。



 俯き、卓を乗り越えて。
 勢いも良く、傾いで落ちる桜の羽を思わず両手で抱き止める。
 落ちる影。流れる桜の長い髪。相も変わらず、溺れる自分―――
「……さくら」
 身体が動かない。鼓動は速く、呼吸も速く。ただ頭の中だけが、停まったと見紛うばかりに鈍って遅く。 
 間近で触れる桜の熱と、届く薫りに意識が染まる。
「―――士郎さん」
 ……新たな酒精が耳から届く。動きも、思考すらも出来ずに。


 ただ。触れる程至近の少女に、合わせ鏡の自分の姿に。
 どうするべきかと、無言の問いを投げ続け。


「わたしは」
 身を寄せる、桜。胸元に掛かる吐息が、さらに思考を染めていく。
「―――とっても、嬉しかったんです」
 ……嬉しい?
「あの夜。先輩に、家族と言ってもらって」
 そんな、今更当たり前のことが。
「……でも、贅沢ですよね。今は、あんまり嬉しくないんです」
「え―――」 
 心が途端に凍り付く。
「先輩」
 呼称が戻る。多少なりとも冷めた頭で、肢体を抱く力を強く。続く言葉を、待ち受ける。


「わたしは―――妹じゃ、嫌なんです」


 ――――――。
「答えて下さい、『先輩』」
 静かに、強く、逸らせない程鋭い穂先を胸へと向けて。



「―――わたしは、貴方の、隣に居たい」



「―――俺、は―――」
 答えを返す。自分の答え。自分の想い。その返答に相応しい言葉を。
 ……いつもの鍛錬を思い出す。
 落ちる撃鉄、貫くナイフ。魔術師は皆、それぞれのイメージを脳裏に浮かべて心を揺らす。
 衛宮士郎の心を揺らし、脳裏に浮かんだイメージは。





 綺麗に貫かれ、風穴を空けられた―――















 


 ―――杯と。
 砕けて溶ける黄金と闇を、紅い視界で見届けた。



「……セイバー」
 残る力を奮い起こして、震える脚で立ち上がる。―――背を向けたまま。剣を下げてこちらを見やる青の少女。
 
 その、かおは。
 纏う空気と、彼女を飾る空の色。
 朝焼けに煙る晴れやかな―――

「―――セイバー」


 ……ああ。
 これだけが、今のわたしに。
 遠坂凛に出来る、唯一つのこと。


 誰に誓った訳でもないけど、あいつに告げたけじめを果たす。
 彼の背中を思い出す。言えず果たせず、消えた約束。当のあいつも、守りは出来ず。大口を叩き、破って消えた。


 わたしの戦は、これで終わった。
 わたしと彼女で、終わらせた。


 ……胸中、苦過ぎる苦笑が漏れる。彼女には、ただ。『見届け』てもらうだけのつもりだったのだと。そんな昔を思い出す。
 ―――自分ででしゃばるか、担ぎ出すか。ただそれだけの違いに過ぎない。
 流石、腐っても兄弟子か。妙な所でやっぱりあれは、永く付き合ったわたしと似ていた。
「―――リン」
 彼女の答えに我へと返る。……夜明けの帳。冬木の街を一望出来る丘の上。
 彼女の姿は淡く、綺麗で。


 その身に差し込む陽光が。
 白く儚く透き通る様が、まるで幻想に思えるくらい―――


「―――セイバー」
 その名を言の葉に乗せる。
 言いたかったこと。言わなければならないこと。
 まだ、言えたかもしれないこと。
 ……数は無尽に、量は無限に。抱えた想いはこの内に在る。
 ―――考えた末に。


「……ありがと」


 ……投げた言葉は、稚拙で単純。ただ一言の、感謝の葉。
 杯が視せた、うつしよのユメ。醒めて消え逝く彼女に贈る、万感の思いを一葉に込めて。


「―――ええ」


 剣を鞘へと収めやり、満面の笑みで彼女が答える。
 その、かおを見て。心が一つ、軽くなる。あの夜。彼女が言った言葉は、紛れも無しの真実だ。
 ―――答えは得た、と。



 だからこれは、ユメの終わり。
 誇りも高く。円卓に座した騎士王は、これより幕を静かに下ろす。



「……思えば。貴女とは、色々なことがあった」
 目を閉じ、詠って呟く彼女。一拍置いて開けた瞳は、それこそ抜ける程蒼く。
「それでも、リン」
 胸に手をやる。左手を己に、右手をわたしに。剣を担うその手を預ける、その指先を預かり抱き。


「―――貴女も、私のマスターだった」
 そのことはずっと忘れません、と。


 ……全く。
 何でこう。そろいも揃って、サーヴァントと言う連中は。
「あんたも、わたしのサーヴァントよ。忘れてなんてあげないからね」
「はい」
「いい年してぬいぐるみに夢中なとことか、無茶苦茶に食い意地が張ってるところとか」
「……私も憶えておきましょう。稀代の粗忽者を主と仰いだことを」
 交わす軽口に、互いに微笑う。―――うん。
 やっぱり別れは、明るく綺麗な方が良い。暗く湿った奴なんて、一回やれば充分だ。
 朧に透ける指先を、強くしっかり握って締める。その細い手は柔らかく。今にも溶けて消えそうな程、頼りも無げに揺れていた。
「―――お元気で」
「……胸を張って、ね」


 別れの言葉。
 遥かな郷に、彼女が静かに眠れます様にと。


 瞬きを堪え、ただそのままに刻を待ち―――
「……ああ」
 ふと。
 漏れて届いた、彼女の言葉に視線を投げて。
「忘れるところでした」
 何でも無い事の様に続く言葉に耳を傾ける。
 怪訝の瞳で、見やった少女は。



「―――最後に、一つだけ伝えないと」



 そんな言葉を、口にした。




 












 ―――薄闇を砕き、差し込む黄金。温かな布団に包まりながら、半身を起こしそれを見やった。
 夜明けを告げる、静かに落ちる陽の光。僅かに開いた襖の隙間、覗いた空は未だに昏く。


 それでも確かに、穏やかに。
 闇の帳は、薄れて消えて―――


「……ふふ」
 現金なものだと。声に出さずに、苦笑を洩らす。幾度となく見た。あれは単に、一日の始まりを示すだけのモノ。
 眠れぬ夜に、待ちも切れない早い朝。
 間桐桜の生活は、毎日いつも夜明けと共に始まって。
 館を抜けて、道を駆け。家に着いたら、蔵へと向かい。
 見慣れて飽きた、厭わしい程温かな光。
 浴びるこの身に光は届かず、熱は心を透り抜けて行く。それを悟って、諦めて。


 ―――その、筈だったのに。


 ……隣を見やる。膨らんだ布団、静かな寝息。この世で一番大事で愛しい、正義の味方。
 赤毛の少年。わたしの太陽。
 それは眩しく、温かく。闇を拭って、心を灯した。


「―――せん、ぱい」

 
 慣れた呼称を敢えて呟く。……彼は暫く、その目を覚ますことはない。この身に眠る刻印が、褥の内で蠢き命じた。
 ―――先輩。
 胸中、微笑み言葉を投げる。決意に再会、離別に懇願。あらゆる色を混ぜたそれ。



 ―――先輩。
 わたしはこれから戦いに行きます。

 ―――先輩。
 けれど必ず帰って来ます。

 ―――先輩。
 今は、さよならを。

 ―――先輩。
 ……でももしも、もしもですよ?

 万が一。有り得ないくらい有る筈のない、もしものことが、あったとしても。



「……忘れないで、くださいね」
 それが絶対。間桐桜に捧げる花の、一番喜ぶ束なのだから。
 ……起きる筈もない彼の傍ら、綿の海から身体を抜いて、素肌に厚手の布を纏う。
 赤と白との、簡素なトレーナー。とても見慣れた、彼の服。
 枕の許に畳まれた、紺のズボンは長過ぎた。不承不承にスカートを履く。
 ……単なる幼稚な心の支え。
 自分は良く知っている。―――何の役にも立ちはしない、と。
 こんなものは、髪を束ねる赤のリボンと同じだ、と。それは握って耐えるだけ。助けてはくれず、救いにもならず。



 ―――けれど。
 それでも、支えてはくれたのだ。



 ―――先輩。
 布団に座り、眠る唇を指でなぞった。……彼に残していくものは、眠りと約束だけじゃない。
 懺悔を。
 最早返せぬ、罪を贖う告白を。
「……ごめんなさい」
 謝って済むことじゃないけど。彼の心を歪めて隠した、その責任はわたしにもある。
 直接触れた訳じゃないけど、黙して語りはしなかった。
 彼の左手、剣の令呪。


 これさえ消えれば、この少年は平和な世界に帰って来れる。
 ―――消えたままなら、この少年が彼女と共に往くこともない。


「……もう。あの人は」
 苦笑を洩らす。思い出した。彼女はいつも、いつだって。昔とちっとも変わっていない。
 何でも出来て、全てを持っている癖に。―――肝心な所で、抜けてるんだから。
 衛宮士郎と、その周り。彼女は今でも、彼と彼らが知らずのままに暮らしていると思い込んでいるのだろう。
 ―――未熟な魔術師。不肖の妹が、自分の魔術に抗えた筈が無いと、思っているのだろう。
「わたし、だって」
 呟く声は、掛け値無しの本音。あらゆる意味で疎ましい。身に眠る蟲、魔術を繋ぐ蠢く回路。
 間桐の秘蹟は、遠坂の魔術を凌駕した。要はそういうことだった。不意の呪いに眠りはすれど、わたしは全てを覚えたままで。
「―――忘れたかったんですよ。姉さん」


 叶うのならば。
 このまま平和に、聖杯などには背を向けたまま、衛宮の家と彼の隣で。
 ―――叶うのならば。
 彼女と別れた初めの夜と、この夜までの一切を。


 ……首を振る。
 弱音を吐いてはいけないと、胸の自分に言葉を投げる。今の状況、杯巡る戦いは。
 嘆きと後悔を抱いたままで、泳ぎ渡れる代物じゃない。
 ―――二週間。幕が開いて、それだけが経つ。 
 殆どの間学校と、衛宮の家に閉じ篭もり。『眼』となる筈の彼女すら、自分の兄に受け渡し。
 ライダーのマスター、間桐桜には、今の戦況が全く掴めていない。
 今、どれだけのマスターと、そのサーヴァントが残っているのか。
 戦う理由、手段、目的。
 英霊と主。彼らが何者で、どういった力を持っているのか、さえ。


「―――ライダー」


 寡黙でちょっと怖くて、けれどどこか優しかった彼女を思い、呟く。
 彼女は恐らく敗れて落ちた。学校の噂話。……堕ちて消え去る、天馬の幻。
 間桐桜はきっと、恐らく。既にもう、自身のサーヴァントを失った。
 ―――それでも。


「……わたしは」


 この戦いを、終わらせる。
 ……おじい様は、きっと全てを知っている。彼の異能と、数日とは言え剣の英霊の主だったこと。
 宿敵とも言える遠坂の魔術師にとって、彼の生命が優秀な『駒』であること。
 ―――そして。
 叛いて逃げた孫娘には、彼が何より尊いことを。
 狙う理由には事欠かず、遮る相手も手段もない。なのに一向にその手を伸ばしてこない現状こそ、却って不思議に思える程だった。
 ……内より見やる、刻印は。わたしの居場所と弱点を、絶えず伝えている筈なのに。
「―――ふふ」
 ふと、微笑う。
 悲しい位に愛しい希望。そんな思いが頭を過ぎる。
 ―――戦う前に、愚かで甘いユメを見た。



 ……おじい様はもう、この世にはなく。
 わたしも間桐の呪縛から、知らずの内に既に解放されている。
 目覚めた兄さんも、昔みたいに優しくなって。
 ―――聖杯を巡る戦。それも当に幕を下ろし。
 勝ち残ったのは勿論姉さん。セイバーさんも望みを叶え、座に帰り。
 先輩も、このまま思い出すこともない。彼は平和に冬木で暮らす。
 ―――姉さん。
 彼女もわたしを訪れて。……姉妹へ還って、一緒に暮らす。
 衛宮の家で、わたしと、彼と、姉さんと。それはきっと、泣きたい位に幸せなユメ。わたしは家族を取り戻し、新たに一人が加わって。


 ―――そんな暮らしの、ある晴れた朝。
 籠いっぱいに、みんなで一緒に作ったお弁当を詰めて。 


「……はい、先輩」
 ユメを払って、頷きを。
 彼の言葉を脳裏に想う。遥かに遠い、理想の郷。間桐桜にとってのそれは、今日今迄のこの場所だった。
 怖いくらいに幸せだった、暖かな午睡。
 ―――夢の夜。
 心を拭って、黄昏薄まる空を仰いだ。未だに冷たく、けれどほのかに温かい。
 冬木の春は、もう近い。彼の言葉を脳裏に想う。なんでもないことの様に、お茶を淹れながら投げられた言葉。
 ……理想の郷は未だに永いと、思わず想ってしまった程の。



 ―――春になったら。
 きっと二人で、咲き誇る雨を浴びましょう。



 静かに眠る、前髪を梳く。―――瞼を降ろして、闇の中へと意識を沈め。
 願う。既に捨て去った筈の思い。無益と思い知らされた、埃に塗れた昔の感情。
 届きはしないと。
 無数の夜に叫んで刻んだ、かつての名前の頃ほど遠い、その名前。


 ―――かみさま。

 
 どうか、お願いです。
 これまでの日々。彼と過ごした、一年と半。
 まるで夢の様だった、その日々が。
 ……本当にただ一晩の、胡蝶の夢でない様に。
 冬木の杯から溢れ浸した、そのユメの続きが。



 春になったら。
 桜の下で、いつかまた。
 彼と彼女とわたしとで、三人揃って見れます様に―――



 ……後ろの髪を、惹かれて一度振り返る。
 毎日、言っていた言葉。返る言葉は今はなく、無言のままに歩みを進め。
 ―――けど、きっと。必ず、遠くないいつか。


「―――行って来ます。先輩」

 
 迎える言葉。返る言葉を、この手に抱こう。



 告げる彼の、幸せそうに揺れる寝顔は温かく。
 ―――最後に触れる唇は、溶けるくらいに甘かった。





























「……私の分も、お願いします」
 青筋を立てた、満面の笑みに。
 遠坂凛は、締まる拳に殺気を込めて。

「言われるまでも無いわ」
 心の底から浮かんで零れる。

 極上の笑みを、少女に投げた。




 



























 どこかで聞いた、懐かしい声。
 苦く、頭痛を堪える色で。

 『私を頼む』と呻いた声を、遠くの空より聞いた気がした。

 
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